雲が流れるのもおかまいなしに、
ぼくは、空の一部を切り取って、きみのポケットに押し込んだ。

「いいの?」
「いいんだ。大丈夫だよ。」

ポケットから溢れる青い光は、
きみの瞳に雲を映して、えも言われぬ美しさを放った。

「ありがとう。またね。」
「またね。」

もう二度と会えなくても「またね。」と言う、きみが好きだよ。

忘れないで。
空を見るたび、ぼくを思い出してくれるだけでいい。

あわてて切った空には、いびつな正方形が残った。

きみの空だけが、ぼくの空を埋める。

世界にひとつだけ。ひとつだけの形だよ。

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