観に行くと公言して、すぐさま行ってきたよ。
だって、今日はレディースデー。

そういや前に映画館で映画観たのはいつだったのか。
地元にシネコンができたのは、昨年の夏だった気がする。
今日、初めて行ってきた。
すごいキレイでビックリしちゃったよ。
だって、私が行ってた映画館って、ホント、田舎の場末の映画館で、
それがノスタルジーに繋がればいいけど、そんなもんじゃなくて、
薄暗い細い廊下と、顔の見えないチケット売り場。
今どき有り得ないほど古びたトイレ。そこから漂う芳香剤のかほり。
スプリングの壊れた座席には、手作りと思わしき心ばかりの座布団。(笑)
いやー、嫌ってほど、田舎なのですわ。
これなら、ビデオかDVDになるの待って、家で見たほうが数倍感動するわい!
って、思ってたくらいだから。

で、シネコン。シートがフカフカで最初、違和感。(苦笑)
でも時間が経つにつれ、偉大さに気付く。
映画鑑賞に大事なのは環境ですわっ!と、つくづく。

さて、肝心の『花とアリス』。よかったです。かなり好みでした。
これは、完璧な少女の物語なのですわ。
喜びと悲しみ。幸せとせつなさ。日常の小さな奇跡がいくつも積み重さなった、
高く高くそびえ立つ、甘い甘いいちごパフェなのですわ。(なんのこっちゃ)

上映開始から数分後。スクリーンいっぱいの桜の花。
「やられたー!」と、思いました。映像の美しさに涙がこぼれましたよ。
花、バレエ、電車、海、制服、雨、初恋、ファザコン、文化祭、そして、嘘。
画面いっぱい。一部の隙もなく完璧な少女の世界。見事です。

薄紅色のフィルムの中に、少女の時間を封じ込める。
それは、奇跡的とさえ思えました。
「撮っておいてくれてありがとう。」そういう感じです。
過去も未来も彼女たちを捕まえることはできず、今。今だけがすべて。

嗚呼、その薄い胸に、いくつの痛みと幸せを抱えるのでしょう。
嗚呼、その眼差しに、いくつの憂いと輝きを湛えるのでしょう。

花とアリス。
二人に好かれる宮本先輩はボーッとして、一見「どこがいいの?」。
でも、それこそが少女の恋なのです。
恋の魔法は「アバタモエクボ(←ちょっと呪文っぽく)」ですもの。
ここで、先輩がマジにかっこよかったら、ダメです。
どこにでもいそうな。そんな先輩に恋するからこそ、少女の恋。
いやいや、本当の恋なのです。

鈴木杏ちゃん(花役)と蒼井優ちゃん(アリス役)。
二人の好演が光ります。まさに、“今”の彼女たちにしかやれない役柄です。
それは今しか、彼女たちも『少女』じゃないからです。
傍役では、アリスの父親役の平泉成さんが、かなりよかったなぁ。
娘とのやり取りがなんとも言えず、別れのシーンはせつなかった。
他にも、要所要所に、有名どころの俳優さんがチラホラ。
それがまたいい味出してて、物語を飽きさせません。

でも、まぁ、特筆すべきは蒼井優ちゃんの少女っぷりの見事さです。

彼女こそ、私が思う『少女』の憧れそのままです。
幼さを残すうなじ、儚く薄い胸、細く伸びるたおやかな手足。
コロコロ変わる移り気な表情と、時折見せる、大人の顔。
私が通ってこなかった、美しい少女の季節。
永遠に届かないから、永遠に惹かれ続けるのでしょうか。
あー、彼女もいずれ大人になるのか、、、と、思うと、
なんとなく悲しくもあり、嬉しくもあり。

って、私、中身ちょっと「おっさん的ドリーム」入ってるよなぁ、、、。(苦笑)

鈴木杏ちゃんは、声勝ちだと思うんです。すごくいい声。
少年とも少女ともつかないその声。才能のひとつだと言っていいと思う。
花とアリスが先輩をめぐって、争うシーンでの「そんなのダメだよ!」って。
彼女にしか言えません。あの声だからグッとくるのです。最高です。

パンフレット買ったのですが、そこにhanae*ちゃん(モデル。12歳)と、
岡本敏子さん(岡本太郎さんの秘書。(で、いいのかな?)77歳)の
対談が載ってるんだけど、その対談内容に意義あり!(偉そうに。笑)
宮本先輩とアリスの関係が、あーいう関係で終わったからこそ、
この映画は「少女の物語」なのです。あそこで二人が恋愛したらダメなのです。
あの瞬間に、アリスは「宮本雅志」という男の子の中で、
永遠に『少女』で在り続ける権利を獲得したんですよ。
それをアリス自身が選んだんです。
だからこそ「アリス」が「アリス」であるのです。
彼女は『永遠の少女』なのですわ!(妙に力説)

、、、と、勝手に作者の意図を深読みしてみる、私。

語ろうと思えば、もっと語れるかも。(もうええわ。苦笑)
観た後、いい気分になれます。少なくとも、私はいい気分です。
とても良い映画でした。

どうもありがとう。

監督/脚本:岩井俊二 撮影監督:篠田昇 美術監督:種田陽平
 
出演:鈴木杏 蒼井優 郭智博 他。

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