フロアの真ん中に、宇宙船のコックピットがあるようだった。

ドラムセットを筆頭に、エレクトリックドラム(っていうの?)やら、
エレキギターやら、シンセサイザー。
足下にも、シンセの上にも無数のツマミにスイッチ。そして、ペダル。
そこから、更に無数のコードが流れ出ている。
素人の私には到底わかりかねる、『音』を奏でる機械たち。
それらがぐるりと設置された真ん中に、ひとつの丸椅子。

ここに座るのは、坂田学氏。である。

セットはフロアの中央に作られ、観客がそれを囲むように360°。
正面も後ろもなく、演奏中、坂田さんはくるくるとよく動いた。

「音」というよりも、それは「空気」だった。
「見えざるもの」に色や匂い、質感を持たす。
音の密度で、空気が染まる。
人の耳で処理できる限界ギリギリの情報量が、ゆっくりと流し込まれる。
「100」を切るか切らないか。その境目。見極めの妙なこと。

快適な重圧。宇宙服を着て月面を闊歩するような。
いつもの6倍の軽さで、ぼくらはゆるやかにジャンプする。

ここではないどこかへ。

三軒茶屋の片隅で。
ぼくらは宇宙旅行に出掛けていたのだ。

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